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第1334話(フレイン視点)
「そんなアクセルも、私に追い付こうと日々真面目に鍛錬している。そうやって努力しても、少しずつしか強くなれないんだ。一気に強くなる方法なんてあるはずもない。訓練つけてあげてもいいけど、きみは毎日努力することはできる? 努力できるのも才能のうちだからね、できないなら最初から諦めた方がいい」
「んなっ……!」
現実的なことを言ったら、アーダンは絶句してこちらを見上げてきた。
強い人に稽古してもらえば、自分も一気に強くなれると思ったんだろうか。そんなわけないのに。
「なんだよそれ! お前、オレをバカにしてるのか!? ああだこうだ言ってるけど、結局オレに訓練つける気ないんだろ!」
今度は逆ギレである。本当に困った子だ。扱いにくいことこの上ない。
アクセルだったら、「自分で毎日頑張るのは当たり前だ」と返答してくるんだけどな……。
「ていうか、お前本当は弱いんじゃないのか!? 弱いからオレに強くなる方法を教えられないんだろ! それで適当なこと言ってごまかしてるんだ!」
逆ギレの次は、無茶苦茶な理論で言いがかりをつけてくる始末だ。本当にどうしようもない。
――この子、一度ボコボコされないとわからないのかな……。
愛用の太刀を掴みかけ、迷った挙句手を下ろす。
さすがのフレインも、素人の子供をボコすのは気が引けた。自分が小さな頃は部隊長に訓練でボコボコにされたものだが、あれはこちらもきちんと訓練を受けていたから平気だっただけだ。まともな訓練を一度も受けたことのない子供を叩きのめしたら、加減を間違えてうっかり殺してしまうかもしれない。
どうしたもんかな……と考えていると、痺れを切らしたアーダンが大きく鼻を鳴らしてきた。
「もういい! お前なんかに頼んだオレがバカだったよ! 訓練なんかつけてもらなくても、オレ一人で強くなれる! 見てろ!」
そう言ってアーダンは、森の中に向かおうとした。
だがその時、森の奥から光る眼がふたつこちらを睨んでいるのが見えた。
「危ない!」
フレインは急いでアーダンの首根っこを掴み、家の方に投げ飛ばした。
勢い余って家の壁にぶつかり、ドーンと派手な音がした。
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