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第1336話
「グオオォォ!」
大熊が咆哮を上げ、兄に襲い掛かってきた。太い前足を振り下ろし、全力で兄を叩き潰そうとしている。あの前足で叩かれたら、並みの人間は簡単に吹っ飛ばされてしまうだろう。
だが兄はひらりとそれを躱し、躱しざまスパッと熊の片腕を切り落とした。あまりに鮮やかな剣技だったため、切られた熊自身も一瞬何が起こったのかわからないようだった。
ボテッ……と右前足が地面に落ち、熊が大きな喚き声を上げる。
一方の兄は至極冷静に太刀を構え直し、淡々とした口調でこう告げた。
「……襲ってきたなら、しょうがないね。私はちゃんと警告した。それを聞かなかったのはきみの責任だ。悪く思わないでくれ」
そこからは一瞬だった。
ほんの少し腰の引けた熊に対し、兄はそれより高く跳躍してサッと太刀を一振りした。
兄が着地したのと同時に熊の首が吹っ飛び、次いで巨大な身体がバランスを崩してどう……と地面に崩れ落ちた。かなりの巨体だったので、地響きもすごかった。
返り血ひとつ浴びることなく、太刀を鞘に納める兄。首を飛ばされた熊が生きているはずもなく、既に身体はぴくりとも動いていなかった。
「兄上、お疲れ様」
アクセルも小太刀をしまって兄に駆け寄った。
兄はにこりと微笑んでこちらに目を向けてきた。
「いや、全然たいしたことないよ。身体は大きくても普通の獣だもの」
「まあな。まさか地上で熊狩りをする羽目になるとは思わなかったが」
「私も。いきなり出てくるからびっくりしちゃったよ」
「その割には、お見事な手際だったぞ」
「狩りだけだったらどうってことないんだよ。今回はアーダンくんがいたから、咄嗟に投げ飛ばしちゃった。人も獣も、頭が足りないと長生きできないねぇ」
本人がいないところで思いっきり嫌味を言っている。これに関しては苦笑いするしかない。
「あんた達、大丈夫かい!?」
外が静かになったのを察して、ようやくアニータが家から出てきた。
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