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第1338話
人目につかない場所から森の中に入り、周りに誰もいないのを確認して一度足を止める。
「ちょっとー、何でいきなり帰っちゃうの? せっかく大きい熊倒したのに」
兄はやや不満そうに口を尖らせた。
「せめて切り落とした前足くらい、もらっちゃってもいいと思うなぁ。お兄ちゃん、熊鍋食べたかった」
「ま、まあそれは帰ってから食べればいいじゃないか。ヴァルハラの方が狩りの獲物は豊富だし」
「じゃあ、近いうちにまた狩りに行こうね? さっきの熊より大物を狩りたいんだ」
「ああ、そうだな」
頷きつつ、アクセルはヴァルハラに帰るために「転移石」を使った。
ポイッと目の前に放り投げたらそこから光のゲートが現れ、中をくぐったらあっという間にヴァルハラに着いた。行きと違って帰りはラクチンだったので助かった。
――さて、ピピはどうしてるだろうか……。
早足で家に戻り、庭のうさぎ小屋を確認する。昨日の今日だからか、まだピピは帰ってきていないようだった。
「ピピちゃんの方は家族で楽しくやってるのかな? ゆっくりできているといいね」
「そうだな。いつ帰ってきてもいいように、小屋の掃除はしておくか」
アクセルは裏の道具倉庫から、ブラシやバケツなどの掃除道具を引っ張り出した。
中に敷いていた古い藁を全部取り除き、バケツの水をぶち撒ける。せっせと床を磨き、水を撒き、また磨き……を二、三回繰り返したら、床もピカピカになった。これならピピも悦ぶだろう。
「あまり気にしない方がいいよ、一般人の感覚はさ」
「はっ……?」
新しい藁を敷き詰めていたら、唐突にそんなことを言われた。
アクセルは手を止めて兄を見上げた。
「? 何の話だ?」
「お前のことだから、変な目で見られたことを気にしてるのかなって。あの熊を倒した後、アニータさんドン引きしてたじゃない? 他の子たちもそうだったけど」
「あ、ああ……まあ、それは……」
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