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第1341話
市場に向かい、必要なものを片っ端から買い込む。サワークリームはもちろん、リフォームに必要な工具や木材なども全部荷台に乗せた。
途中、兄が脇道に逸れて食べ物でも工具でもないものを購入していたが、よく見ていなかったので何を買ったかアクセルにはわからなかった。
「ふふ、今日の買い物も楽しかったねぇ」
家に帰ってきてからもやたらと上機嫌な兄。
何故そんなに上機嫌なのかと首をかしげたが、スープのための野菜を切っているところで兄に新しいエプロンを渡された。
「これ、さっきの市場で買ってきたんだ。お前に似合うと思うから着てみてよ」
「ん? そうなのか? まあエプロンならありがたいな」
早速それを受け取って身に付けようとしたのだが、思った以上に丈が短い。アクセルの太ももギリギリまでしか丈がない。ポケットはついているものの、ドレスのようなフリルも縁取りされていて、「はて?」と頭をひねってしまった。
これは本当にエプロンなんだろうか。それにしては随分と装飾過多というか、機能性に乏しい気がするのだが……。
「兄上、これおかしくないか? 何でこんなフリルがついてるんだ? 料理するには邪魔なだけだろう?」
「いいんだよ、それはそういう『おしゃれエプロン』なんだから。メイドさんが身に付けているのと同じようなものさ」
「メイドって……俺は女じゃないんだが」
「まあ細かいことは気にせずに。料理するだけなら支障はないでしょ? 最悪、手を拭けるだけでもエプロンとしての機能は果たせる」
「……それはそうなんだけどな」
「というわけで、着てみて。お前なら似合うと思うからさ」
上手く丸め込まれている気もするが、せっかく兄が用意してくれたものを無下にするわけにもいかず、アクセルは服の上からフリフリのエプロンを身に付けた。
――うーん……こういうのは、女性が身に付けた方がいい気がするんだけどな……。
まあでも誰かに見せるわけではないし、最低限のエプロンの機能は果たせている。
気を取り直し、アクセルは肉や野菜を切った。
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