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第1346話
にこりと微笑み、続けて兄が尋ねてきた。
「ところで、お前はランク上げたら何かやりたいことはないの?」
「え? そりゃあ、兄上との死合いを……」
「それはわかってるよ。そうじゃなくて、もっと別の目標さ。それこそアロイスくんみたいに、『里帰りできるようにヴァルハラのルールを変えたい』とか」
「それは……」
「お前も何か作った方がいいよ。目標がひとつしかないと、いざ叶った時に燃え尽き症候群になっちゃうからね」
「そ、そうだな……」
「それはそうと、さっき着てたエプロンまた着てくれない? あれ、すごく似合ってたからさ」
「……ええ? いいけど、料理しないならエプロンする必要なくないか……?」
兄の意図がわからず、アクセルは首をかしげながら再びエプロンを身に付けた。
せっかくだから、このまま夕飯の準備しちゃおうか……とキッチンに入ったら、
「おっと、エプロンの着方間違ってるよ」
と、エプロンごと服を脱がそうとしてきた。
「ちょ……兄上、やめてくれ。そもそも着方間違ってないから」
「いや、間違ってるね。そのエプロン、本当は裸状態で着るものだし」
「……は?」
意味不明な発言に、思わず目が点になる。
「い、いや、何言ってるんだ? 裸状態で着るエプロンなんてあるわけないだろ」
「あるってば。裸エプロンって、お前知らないの?」
「知るわけないだろ、そんなの! だいたい、さっきスープ作ってた時は何も言わなかったじゃないか!」
「さっきは火を扱ってたから、火傷すると危ないなーと思って言わなかっただけだよ。本当は裸の上から着る用のエプロンなの。だから今度こそ正しく着て欲しいんだ」
「そんな……ちょ、わっ!」
戸惑っている隙に服を脱がされ、下着ですら没収されて、その上からエプロンを被らされる。
ただ全裸になるより恥ずかしく、アクセルはエプロンの裾を一生懸命引っ張った。
――うう……道理で丈が短いと思った……。
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