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第1357話

「う……」  次に目覚めた時、外はすっかり暗くなっていた。  ――ああ、そうだ……。夕食の準備をしようと思ったら兄上にエプロンを着させられて、それで……。  自分のベッドで、軽く身じろぎする。  どれだけ気絶していたかわからないが、夜になってしまったことは確からしい。あまり腹は減っていないものの、何か軽く栄養補給をしたい気もした。 「おや、目が覚めたのかい?」  兄が銀色のトレーを持って寝室に入ってきた。トレーにはお椀とグラスが乗っており、軽食を用意してくれたのだとわかる。 「お前のことだからあまり食欲ないかと思って、アニータさんのスープを作ってみたよ。我ながら、なかなか上手く再現できたね」 「そうか……」 「ここ置いておくから、食べたかったら食べて。疲れてたらそのまま寝てもいいよ。身体は洗っておいたしね」 「っ……」  ということは、また知らない間に兄に中まで洗浄されたということか。ほとんど覚えていないが、それはそれで結構恥ずかしい。  ――まあ、後始末してくれるだけありがたいけどな……。  アクセルはサイドテーブルに置かれたお椀とスプーンを手に取った。  兄が再現してくれた豆のスープは、本物と違って野菜の切り方がやや乱雑だった。面取りもされていないし、一口サイズでもない。こういうところは、兄の適当な性格がよく出ていると思う。 「兄上は何か夕飯食べたのか?」 「うん、私は宴会場に行ってシチューをたらふく食べてきた。やっぱりイノシシのシチューは美味しいよね」 「そ、そうだな……」 「そうだ、近いうちにまた狩りに行こうね。地上では大物の熊を倒しただけで終わっちゃったし。あの熊よりもっと大きい獣を仕留めて、ステーキいっぱい食べなくちゃ」 「あ、ああ……」  ……兄の食欲と自分の食欲、足して二で割ればちょうどいいだろうに。

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