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第1363話

「まあ弟くんもだいぶ強くなりましたけどね。とはいえ、上には上がいるのもまた事実です。特にランク二桁は結構な激戦区ですから。五〇位くらいでも、『これは』と思う戦士はたくさんいますよ」 「確かにな。ちょいと軽く手合わせしてみたいと思えるヤツはいるもんだぜ」  と、ジークが頷く。 「ま、今回は手合わせじゃなくガチの死合いになりそうだが。挑戦状を叩きつけてくるヤツがどんな戦士なのか、楽しみでもあるな」 「どうかな。誰も挑戦してくれない可能性も無きにしもあらずだよ。特にミューやランゴバルトなんかは、挑戦者が避けて通りそうな相手だろうし」  兄がニヤリと口角を上げたが、ミューは真顔でこう返した。 「んー、僕は別にそれでもいいかなー。ぶっちゃけ、ランクも七位以内じゃないとまともな死合いにならないしさー。でも七位以上の人はトーナメント参加できないんでしょ? じゃあ挑戦状叩きつけられても意味ないかなーって」 「はは、さすがミュー。たいした自信だね」 「ホントのことだからねー。それにほら、僕は『一位』というランクを賭けて戦わなきゃいけないのに、それがつまんない消化死合いだったら興冷めじゃない? だったら僕は、他人の死合いを面白おかしく見学してる方がいいなー。……あ、このソーセージ美味しい。アクセル、おかわり出してー」  ……などと、ソーセージ片手にキッチンに入ってくる。  アクセルは苦笑しながら新しいソーセージを大鍋で茹でた。  ――ミューの強さは、ヴァルハラの七不思議に入りそうだな……。  見た目はアクセルよりかなり小さい少年にしか見えないのに、どこにそんな強さを秘めているのだろう。他の戦士ではほとんど勝負にならないと言っているが、一度ミューが本気を出した死合いを見てみたいものだ。

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