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第1364話

「何にせよ、俺らは挑まれる立場ってことだ。くれぐれも、足元を掬われないように鍛錬を怠らないことだな」 「当然ですね。わたくしの居城を誰かに盗られるなど、あってはならないことです」  と、ユーベルがワインを揺らしながら言う。  アクセルは揚げたての唐揚げとフライドポテトをテーブルに出しつつ、口を挟んだ。 「それで、そのトーナメントはいつ行われるんですか?」 「ハッキリしたことはわからねぇな。近いうちに正式な発表と共にトーナメント表も貼り出されると思うが」 「ルールは、いつもの死合いと同じ感じでいいんですかね?」 「おそらくそうでしょう。先日のランクマッチのように、チーム戦で『飛び道具限定』などという謎の縛りはないと思います」 「よかった……。なら、ただ実力で勝ち進めばいいだけですね」 「おー。アクセル、すごいやる気になってるねー。そんなにフレインと戦う権利が欲しいんだ?」 「ああ。そのために今まで鍛錬してきたようなものだからな。兄上と戦うためなら何だってするさ」  自分の夢がようやく叶いそうなチャンスが訪れたのだ。これを逃す理由はない。このチャンスを掴めなかったら、「兄と死合いたい」という夢は永遠に叶わないと思ってもいいだろう。  それだけアクセルは真剣だった。 「ふふ、私もお前が勝ち上がってくれるのを楽しみに待ってるよ。強くなったお前との死合い、想像しただけでわくわくしちゃうね」 「ああ、そうだな。今度こそ兄上に滅多斬りにされないよう、頑張るつもりだ」  そう言ったら、ユーベルが呆れた目でこちらを見た。 「気が早いですねぇ……。トーナメントはほぼ全ての戦士(エインヘリヤル)が参加するのですよ? 誰と当たるかも完全ランダムですから、油断はできません。それに、相手が正攻法で来てくれない可能性もありますし」 「……? どういうことですか?」

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