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第1368話
兄には釘を刺されたが、さすがに死ぬような無茶はしない。いくら何でもそこまで馬鹿じゃない。
――とりあえず一度チャレンジしてみて、無理そうなら帰ってくればいいだろ。
軽く様子を見るだけなら、事故も起こらない。明日にでも山奥の修行場に行ってみよう。
「ねー、そんなことよりこのピザもっと食べたいなー。アクセル、おかわりはないの?」
……などと、ミューが図々しくお願いしてくる。
兄は「もうそのくらいにしてよ」と窘めていたが、アクセルはかまわず新しいピザを焼いた。何だかんだで楽しい食事だった。
***
翌日。アクセルは早速山奥の修行場に向かった。
タオルや飲み水を鞄に纏めていると、兄がやや呆れた顔で念を押してきた。
「行ってもいいけど、無理だけはしないでよ? 『これはダメだな』と思ったらすぐにやめること。わかった?」
「わかってるよ。兄上も心配性だな」
「何言ってるの。お前、滝に打たれながら失神したこともあったじゃないか」
「そ、そうでした……」
ケイジの修行場(しかも麓の一番簡単な場所)で初めて滝行した時、水の冷たさと重さに耐えきれず、途中で気を失ってしまったのだ。しかも自分では気づかないうちに失神していた。今思えばかなり恥ずかしい。
兄は腰に手を当てて残念そうに肩を落とした。
「はあ……どうして今日に限って狩りの引率なんかしなきゃならないんだろ。面倒だなぁ……」
「しょうがないさ。たまの仕事くらい、きちんとこなさないとな」
「というかお前も、修行場に行くのは明日以降でよかったんじゃない? それなら私も一緒に行けたのに」
「一日でも多くトレーニングしたいんだよ。トーナメントでは何としても優勝したいからな」
「そりゃ、私だってお前には優勝してもらいたいけどさ……」
「大丈夫だって、ちょっと行ってみるだけだから。他に人もいないだろうし、俺が気を付けてさえいれば何も起こらないさ」
心配そうな兄を差し置き、アクセルは鞄を持ち上げた。
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