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第1378話
「お前、それ道間違えてない?」
「……え?」
「ケイジは確かに修行バカだけど、道中まで険しい道のりにしたなんて聞いたことないよ。というか私も何度か山奥の修行場に行ったことあるけど、そんな岩山を越えた記憶はございません」
「えええ?」
思わずレモン水をこぼしそうになった。
道を間違えたとはどういうことだ? 山奥の修行場に続く道は、あれ一本だけしかなかったはずなのだが。
「おかしいな……一体どこで間違えたんだろう。道なんて間違えようがないはずなのに、どうして……」
そうやって首を捻っていると、兄は呆れたように腰に手を当てた。
「ホント、お前一人で行動すると何かしらやらかしてくるよね。今回は怪我なく帰ってこられたけど、もしその岩山? から転落してたらタダじゃ済まなかったよ」
「う……すまない……。俺も間違えるつもりはなかったんだが……」
「まあ、無意識に間違えちゃうところがお前らしいけどね。今度は私も一緒に行ってあげるから、次に行く時はあらかじめ声かけるんだよ?」
「あ、ああ……わかった」
やや納得できない気持ちを抱えつつも、仕方なくアクセルは頷いた。
――と頷いたものの、絶対道は間違えてないはずなんだよな……。
兄が言っているのは昔の道のことで、今は岩で加工されてしまっただけなのでは……と思う。
それともアクセルの知らない術か何かがかけられていて、岩山の幻影でも見ていたんだろうか……いや、そんなはずは……。
「それはともかく、今夜の夕飯はステーキにしない? 狩りの引率してたら結構な大物が狩れてさ、新鮮なお肉がいっぱいあるんだ」
「ああ、うん……それでいいぞ。兄上が食べたいものにしよう」
そう言ったら、兄は喜び勇んで庭に出て行った。
何をするのかと思ったら、そこには荷台に乗せられた巨大な熊が寝かされていた。あれが狩りの大物だろうか。多分、今から捌くつもりなのだろう。他の獣の臭いがするのか、ピピが若干嫌な顔をしている。
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