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第1379話
――まあいいや、わからないものは考えても仕方ない。
次回は兄もついて来てくれる。正しい道を教えてくれるならそれでいいし、岩山という幻覚を見せられていたのだとしても、結果的に無事に帰って来られたのだから問題はない。今はトーナメントに備えてできるだけ強くならなくてはいけないのだから、余計なことを考えるのはやめよう。
「じゃ、今からスパスパ~ッと捌いちゃうね、お前はゆっくりシャワーでも浴びてくるといいよ。鍛錬の汗を流していないだろう?」
そう言われたので、アクセルはお言葉に甘えて湯浴みをすることにした。
目の前で熊を捌かれてピピが不快な顔をしていたので、庭の露天風呂で一緒に汗を流すことにした。ピピの身体も石鹸で念入りに洗った。これで熊の臭いは気にならなくなるだろう。
「ねえ見て! いっぱいお肉捌けたよ。余った分は燻製か塩漬けにでもしよう」
湯浴みを終えてピピの身体を拭いてやっていると、兄が上機嫌で捌いた生肉を見せつけてきた。捌きたてだから手も血まみれだし、頬にも擦れた血がこびりついている。
アクセルは苦笑しながら、言った。
「兄上もシャワーしてきた方がいいぞ? あと、服も洗濯に出しておいてくれ。片付けは俺がやっておく」
「……ん? ありゃ、いつの間にこんなことに」
自分を見下ろし、自分の汚れっぷりに呆れている兄。余程獣を捌くのが楽しかったんだろう。何かに夢中になっていると、気づかないうちに身体が汚れていたりするものだ。
……ただ、どうせ作業するなら汚れてもいい服を着てやって欲しい。兄の服は白ベースだから洗濯するのが大変なのだ。
――まあ、兄上が楽しそうにしているのはいいことだけどな。
ピピの毛づくろいをした後、アクセルは庭の片付けをして、それから魔法のドラムに洗濯しに行った。
そんな雑用をこなしていたら、すっかり陽が暮れていた。
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