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第1381話
兄も不思議そうに首をかしげた。
「何でだろうね? トーナメントが行われるって発表されてから、上位陣が軒並み仕事に駆り出されるようになった気がするんだ。もしかして、しばらく私たちに鍛錬させないつもりなのかな」
「ええ……? なんで急に? 兄上だって、全く鍛錬できなくなったら困るだろう?」
「まあそうだけど、運営側は『その方がトーナメントが面白くなる』と思ってるんじゃないかなぁ? 私たちが今のまま鍛錬し続けたら強すぎるから、勝ち上がった人に少しでもチャンスを与えたいのかもよ?」
「そ、そうなのかな……? でも、それが本当だとしたら随分セコいというか……」
いつかは兄と死合って勝利したいと思ってはいるが、一方で兄には常に強くあって欲しいとも思っている。対等でありたいと願いながら、強者のまま憧れの存在でいて欲しいという、相反する気持ちがあるのもまた事実だ。
その気持ちはアクセルにとってとても神聖なもので、下手な小細工で汚されたりすると何だかちょっと腹が立つ。それがヴァルキリーたちの思惑なら、尚更不快だ。
むむ……と口を尖らせていると、兄が軽やかに笑い飛ばしてきた。
「何を怒ってるの? ちょっと仕事が入ったくらいで、私が弱くなるわけないでしょ」
「……それはそうなんだけどな」
「私のことは心配いらないよ。それより、お前はトーナメントに集中しなさい。頑張って勝ち上がって、私のこと指名してね」
「ああ、そのつもりだ」
まだトーナメント表は発表されていない。だが、どんな戦士が相手になっても負けるわけにはいかないのだ。
自分の長年の夢が、今度こそ叶うかもしれないのだから。
――近いうちに、もう一度あの修行場に行ってみよう。兄上がいなくても、二度目以降なら少しは楽に登れるだろう。
今度はもっとたくさんの水を用意して……と考えつつ、アクセルはステーキを頬張った。
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