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第1383話

「まあとにかく、今度は混雑してない時間を狙いなさい。昼間は諦めて、地道に鍛錬すること。基本的な鍛錬を欠かさなければ、誰と戦うことになっても負けないはずだよ」 「そうだな。とりあえず、夕飯まで庭で鍛錬してくるよ」  アクセルは庭に出て、早速整備した鍛錬スペースに向かった。  主人が庭に現れたので、ピピもめざとくうさぎ小屋から飛び出してきた。  じゃれついてくるピピを撫でつつ、庭に設置されているトレーニング器具を眺める。  ――さて、今日はどれで鍛錬しようか……。  あれからコツコツ庭のリフォームを進めてきたので、今や鍛錬に効果的な器具がたくさん揃っている。中にはケイジの修行場を参考に作ったものもあった。落とし穴の上の丸太はお気に入りだ。 「よし、まずはこれだな」  アクセルは近くにあった石を担ぎ、丸太の上を渡ることにした。これをやると体幹がどれだけ強くなったかがわかり、強化すべき箇所も判明するのだ。 「ピピ、そこで見ててくれな。くれぐれも丸太をキックしないように」  そう念を押し、アクセルは不安定な丸太の上を歩いた。  真似して作ったとはいえ、こちらはもっとイージーに、深さ一メートルくらいの浅い落とし穴にしてある。底にも藁などの緩衝材を敷き、万が一落ちても怪我が少ないようにした。  ――鍛錬の度に棺行きになってたら、時間がいくらあっても足りないしな……。  最近はバランスを崩すことも減ってきたが、始めたばかりの頃は丸太から転落するのが当たり前だった。その度に落とし穴の底に身体を強打し、青アザだらけになっていたものだ。兄にも「お前、体幹弱すぎ」と何度呆れられたことか(実際は、兄やケイジの体幹が強すぎるだけなのだが)。  そんなアクセルも、最近ようやく丸太を渡り切るまでに成長した。もう少し続ければ、あの修行場の丸太も渡れるかもしれない。  もっともあちらはかなりデンジャラスなので、挑戦する際は細心の注意を払わなければならないが。

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