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第1384話

「ぴー……」  見ているだけでは退屈だったのか、ピピが前足でガリガリと地面を引っ掻き始めた。  もう少しで渡り終わるからあとちょっと待ってくれ……と言おうとしたら、ピピはとことこと丸太まで近づいて来て強靭な前足でベシベシ叩いてきた。 「うわっ……! ちょ、ピピやめてくれ! そんなことしたら落ちちゃうって!」 「ぴー」 「そりゃ死ぬほどの高さじゃないけど、落ちたらそれなりに痛いん……くっ!」  今にもバランスを崩しそうになり、どうにかこうにか踏ん張ってみせる。ただでさえ足場の悪い丸太を、こんな風に揺らされたらいつ落下してもおかしくない。  ――ああ、もう……!  遊んで欲しかったのか? お腹が空いているのか? それとも湯浴みしたいのか? 何にせよ、早く渡り切らないと。棺行きにはならなくても、泉行きになることはたくさんあるのだ。  下半身に力を込めつつ、アクセルは揺れる丸太の上をなるべく早足で渡り切った。渡り終えた瞬間力が抜けてしまい、担いでいた石をドスンと落としてしまった。 「ぴー♪」  丸太を揺らしていた張本人は、何故かドヤ顔でこちらに擦り寄ってくる。ピピの意図はさっぱりわからなかったが、怪我なく丸太を渡り切れてホッとした。  ――意外とできるもんだな……。以前の俺だったら、揺らされて数秒で落下してた気がするが。  それだけ体幹が強くなってきたということか。飛躍的な進歩はないけれど、少しずつ成長している。鍛錬の成果は確実に出てきている。 「ありがとな、ピピ。おかげでまた成長に気付くことができた」 「ぴー♪」 「でも、渡っている最中の丸太を揺らすのは純粋に危ないんだからな? 今回は運よく怪我しなかっただけで、次やったら落ちるかもしれないんだからな?」 「ぴ……」 「なので、急に揺らすのはやめてくれ。揺らして欲しい時はちゃんと言うから」 「ぴー」  ピピはうんうんと頷きながら、上機嫌にじゃれついてくる。  まあいいか……と思いつつ、今度は走り込みを行うことにした。ピピもご機嫌なまま、隣を並走してきた。

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