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第1385話
そして夕食の時間になり、兄の作ってくれた熊肉のシチューを平らげ、みんなが寝静まったであろう時間帯を見計らって世界樹 の前まで行った。
夜は明かりが少なく、頼りになるのは月と星くらいしかない。念のためにランプを持ってきたが、今夜は風が強めに吹いていてあまり役に立たなかった。
だが深夜という時間帯を選んだおかげか、世界樹 の前には誰もいなかった。
――ええと、俺の名前は……。
貼り出されているトーナメント表から、自分の名前を探し出す。
ヴァルハラの戦士ほぼ全員が組み込まれているトーナメント表なので、紙自体も大きくどこに誰が書かれているのかさっぱりわからなかった。これは自分の名前を探し出すだけでも一苦労なのではないだろうか。道理でいつまで経っても混雑が緩和されないはずだ。
「はぁ……もう」
どこだよ、俺の名前……と、目を凝らして一生懸命探す。
誰もいないなら探しやすいだろう……と思ったが、暗い中で細かい字を見て行くのもかなりの苦労を要する。
こんな無駄な労力を割くくらいなら、やはり一度トーナメント表を引っぺがして、縮小コピーした上で全員に配布してやった方がいいんじゃないかと思う。トーナメント表を手元に置いて見返したい人もいるだろうし。
「…………」
アクセルはきょろきょろと周りを見回した。
今のところ、周囲には誰もいない。巡回している警備係もいないし、うるさいヴァルキリーもいなさそうだ。
――よし……!
アクセルは貼り出されているトーナメント表を素早く剥がし、深夜の図書館に持って行った。
最近はとんとお留守だが、図書館には魔法のコピー機がある。書類を読み込ませると、ちょうどいい大きさに書き換えた紙を出力してくれるのだ。縮小コピーしたトーナメント表を世界樹 前に置いておけば、皆も喜ぶだろう。
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