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第1391話
「それでチェイニーが本気を出してくれるなら安いもんだ。どうせなら、お互い本気で戦いたいからな。……ああ、仮に俺が負けたとしても、俺の実力が足りなかっただけだから恨み言を言うつもりもないよ」
「…………」
「お互い、勝ち上がれるように頑張ろう。戦えるのを楽しみにしているぞ」
そう言ったら、チェイニーはさも複雑そうな顔になった。気まずそうに視線を逸らし、歯切れの悪い口調で聞いてくる。
「あのさ……自分で言っといてなんだけど、そんな条件呑んじゃって大丈夫なの? フレイン様がなんて言うか……」
「ああ、まあ……でも大丈夫じゃないか? 友達とちょっと出掛けたくらいで、兄上は怒らないと思うぞ」
「……そうかなぁ? フレイン様って怒らせるとめっちゃ怖いイメージがあるんだけど」
「あー……確かに、ブチ切れたらどんでもないことになるな。でも今回は悪意があるわけじゃないし、本気で戦う条件を呑んだだけだから。それなら兄上も理解してくれるさ」
「……うーん。そんな軽く考えて大丈夫なのか? 心配でたまらないんだけど」
なおも心配の表情を崩さないチェイニー。
そこまで心配する意味がわからず、アクセルは首をかしげた。
――これくらい大丈夫だと思うけどな……。というか、これを浮気だと認定されるなら、兄上の方がもっととんでもないことしてるし。
自分はただ、友人と真剣に戦いたいだけだ。その条件として「勝ったらデート」みたいな話が出たのであって、デートそのものが目的なわけではない。
そもそも、友人と遊びに行く行為をあえて「デート」と言っているだけで、恋人同士の逢引とはわけが違うのだ。だったら何も問題ないではないか。
気持ちを切り替えるように、アクセルはひらひらと手を振った。
「とにかく、お互い頑張ろうな。俺は鍛錬に戻るよ」
「お、おう……そうだね」
チェイニーが帰っていくのを見送り、中断していたトレーニングを再開した。次は素振りをすることにしよう。
「ふっ……はっ……!」
僅か三センチの丸太の間に、愛用の小太刀を振り下ろす。右手と左手を交互に、何度も同じことを繰り返した。
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