1392 / 2001

第1392話

「っ、あ……引っ掛かったか……」  何度目かの素振りで左の小太刀が丸太に引っ掛かり、木の皮が綺麗にこそげ落ちた。  以前より太刀筋はかなり整ってきたものの、まだ時々ブレることがある。何が起きてもブレない太刀筋を身に付けなければ、トーナメントを勝ち上がることはできない。 「……まだまだ」  引き続き、アクセルは両手の素振りを繰り返した。昼食前には、太刀筋矯正の丸太はだいぶボロボロになっていた。そろそろ新しいものに取り替えなくては。 「アクセル、お昼ご飯は何にする?」  家にいた兄が、ベランダからこちらに声をかけてきた。ちょうど古い丸太を担いで、家の裏手に運びに行くところだった。 「ああ、俺は特にこだわりはないぞ。兄上の好きなものを作ってくれ。ステーキのサンドイッチでもいいし」 「あ、そう? じゃあゴロゴロお肉のスープにでもしようかな。……ところで、さっきお友達と何を話してたの?」 「何って……」 「ほら、お前の同期の赤髪の子。庭に来てたじゃない」 「……チェイニーな。別にたいしたことじゃないよ。トーナメントで当たったらお互い本気で戦おうなって、約束しただけだ」  チェイニーが勝ったらデートする……っていう条件はあるけど、と心の中で付け足す。これを兄に話したら面倒なことになりそうなので、とりあえず今は黙っておいた。 「ふーん、そっか。まあいいや。とりあえず私はサクッと昼食作っちゃうから、お前はそのまま鍛錬しておいで。できたらまた声かけるからさ」  そう言って、兄は再び家の中に引っ込んだ。  残されたアクセルは、丸太を新しいものに取り替えながら考えた。  ――まあ、必ずしもチェイニーと戦えるわけじゃないんだけどな。  自分がチェイニーと戦うには三回トーナメントを勝ち進まないといけないし、チェイニーの方も同様である。お互い勝ち進んでようやく戦えるわけで、その前で負けてしまう可能性もゼロではないのだ。

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