1395 / 2001

第1395話

「え? 今から行くの? あと二時間くらいで夕方だけど」 「それだけあれば余裕だよ。いつものコースを行って帰ってくるだけだから」 「……そうかい? 私もついて行こうか?」 「いや、ピピと一緒に行くから大丈夫だ。いざとなったら背中に乗って帰ってくるし」 「そこまで言うなら止めないけど……でも気を付けるんだよ? お前はただでさえそそっかしいんだから」 「わ、わかってるよ……」  苦笑しつつ、アクセルはピピと家を出た。  山の麓まで軽くランニングをし、それからいつものハイキングコースに足を踏み入れる。  ――ああ、そう言えばそろそろ紅葉の時期なんだな……。  なだらかな山道には、見所のある木々がたくさん並んでいる。秋には紅葉が綺麗だし、春には桜が満開になるのだ。  考えてみれば、今年はまだ兄と紅葉狩りをしていない。トーナメントに集中しなければいけないのはわかるけれど、たまには兄やピピと綺麗な景色を見て息抜きをしたいものだ。  紅葉が見頃になったら、ちょっとだけ見に来ようかな……。 「ぴ……」 「ん? どうした、ピピ?」  ピピが急に足を止めたので、アクセルも気になって足を止めた。  茂みに隠れて見えなかったが、ピピが立ち止まっている箇所から、横に一本細い道が延びているのを見つけた。人が一人やっと通れるくらいの道だったので、気づかなかった。 「こんな道、前はなかったよな……? 誰かが意図的に作ったのか……?」  道を作る……と言ったら、やはりケイジの顔が思い浮かぶ。彼のことだから、ハイキングコースの脇道にも修行場へ続く隠し通路を作ったに違いない。  ということは、この道を行けばまた修行場に辿り着けるのでは……? 「ぴー」  どうしようか迷っていたら、ピピに服を引っ張られた。そっちに行ったらダメだよ、と身体を張って止めてくれている。  それで一気に冷静になり、アクセルはピピを撫でた。

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