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第1397話
「……ホント、無事に帰ってきてくれてよかったよ。ピピちゃんに感謝しなきゃな」
「え……そんなに危険な道だったのか……?」
「わからないけど、怪しい道だったのは確かだと思う。少なくとも人工的に作られた道じゃないから、獣道か……あるいは、おかしな術でもかかっていたのかもしれない」
「おかしな術……?」
「あくまで可能性だけどね。でもゼロではなかったはずだよ。ピピちゃんは神獣だから、本能で『こっちはヤバそう』って思ったんじゃないかな。それでお前を止めてくれたんだ。そうじゃなかったら今頃、山で迷子になっていたかもしれない」
「…………」
今更ながら、腹の底が冷えるような感覚を味わった。あの時横道に逸れていたら、今自分はここにいない。ピピが止めてくれなかったら、「ここもケイジ様が作った道だろう」と思い込んでそちらに進んでしまっていたと思う。
視線を落としていると、兄は苦笑混じりに言った。
「ホントにお前は……いくつになっても危なっかしくてしょうがないんだから。後でピピちゃんによーくお礼言っておきなさいね?」
「う、うん……わかってるよ」
「それと、今後お前は一人で知らない場所行くの禁止ね。何があるかわかったもんじゃない。初めての場所は一度私がついて行くから、それで道を覚えてから行きなさい。どうしても私の都合がつかない時は、ピピちゃんでも他の戦士でもいいから同行してもらうこと。わかった?」
「…………」
「お返事は?」
「は、はい……わかりました」
そう釘を刺されてしまっては、頷くしかなかった。
――いい大人が一人で出歩けないって、だいぶ恥ずかしいんだが……。
これでもアクセルは二十七歳の大人だ。ヴァルハラに来てからそこそこ年月も経っているので、中身の年齢はもっといっている。
それなのに、未だに兄の保護下にないと罠に引っ掛かりまくるとはどういうことだ。これでは、興味本位で知らない場所に突撃してしまう子供と変わらないじゃないか。
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