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第1403話

 どういう意味か聞き返す前に、兄は次の修行に移ってしまった。  次はケイジもやっていた、裸足で熱い砂の上を渡るものだった。 「さてと、じゃあサクッと歩いちゃおうかな」  そう言って、当たり前に靴を脱ぎ始める兄。そしてそのまま砂の上を歩こうとするので、さすがにぎょっとした。いくら修行でも、そんなことをしたら足の裏が焼けてしまう。足が焼けたら歩いて帰れない。 「あ、兄上、裸足はマズいって! ちゃんと靴は履いてくれ!」 「え? 靴を履いたら修行にならないじゃない」 「でも足が焼けちゃうだろ! それじゃ家に帰れなくなってしまう」 「そんなの狂戦士モードになれば問題ないでしょ」 「…………えっ?」 「まさか素のままやると思った? さすがにそれは私でも無理だよ。そんなの修行じゃなくて拷問だもの」 「そ、そうだよな……」  冷静に考えたら当たり前だ。普通の状態で歩くだなんて、ケイジみたいな変態でもない限り不可能である。 「この砂は、どんな刺激を受けても狂戦士モードを保っていられるように訓練するものだね。あとは、モードの切り替えをスムーズにできるようにかな。雄叫びを上げずに狂戦士モードに突入できれば、それだけ戦闘も有利になるからね」 「なるほど……」 「お前はまだ狂戦士モードそこまで安定してないだろう? この際だから、これもやっていきなよ。下山して泉に入るまで狂戦士でいられたら、ひとまず及第点だ」 「あ、ああ……わかった……」  兄は簡単に言っているが、実際にそれをやるのはかなり難しい。  狂戦士モードを保つには結構な精神力が必要だし、少しでも動揺したり気を抜いたりしたらすぐさま通常モードに戻ってしまう。そうなったら足の激痛に襲われ、完治するまで狂戦士にはなれないだろう。  息をするようにモードを切り替えられる上位ランカーには朝飯前だけど、狂戦士モードを覚えたての戦士には非常に難易度が高い修行だ。

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