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第1404話

 ――でも、これができなかったら強くなれないからな……。  トーナメントを勝ち抜くためにも、こういったテクニックは必要不可欠である。これを機にしっかり身に付けなくては。  アクセルはまず、兄の様子を見学しながらそのやり方を学んだ。渡り始める前にサラッと狂戦士モードに切り替わったようだったが、どうやって変化させたか一回見ただけではわからなかった。  呼吸法にポイントがありそうだが……一体どうやったんだろう。 「うん、案外余裕だったね」  砂を歩ききった兄が、にこりとこちらに笑みを向ける。足が焼け焦げる臭いが生々しかったものの、痛みは感じていないようだった。狂戦士モードが続いている証拠だ。 「さ、お前もやってみなさい。くれぐれも途中で狂戦士モードを切らさないようにね」 「あ、ああ……。というか、兄上は早く泉に行った方がいいんじゃないか?」 「平気だよ。お前が歩き終わるまで我慢するくらい余裕だって」 「そうかな……でも……」 「さ、早く歩きなさい。モタモタしていると私の狂戦士モードが解けてしまうかもしれない」 「は、はい……!」  促され、アクセルは急いで靴を脱いだ。  砂の際に立ち、集中力を高めて自らに気合いを注入する。 「……はぁッ!」  途端、周囲の景色が鮮やかになり、空気の流れが詳細に見えてきた。感覚も鋭くなり、身体も一気に軽くなる。  ――よし……!  思い切って砂に一歩足を踏み出した。ジュッ……という音はしたが痛みは感じなかった。  ――よかった……これなら無事に渡り切れるな。  そう思い、なるべく早足で歩こうとする。  だが砂が柔らかすぎて上手く前に進まず、足をとられて転びそうになる場面が何度かあった。  普通の地面ならスタスタ歩けるのに、こんな時に限って進まないとか勘弁して欲しい。焦ってしまうではないか。 「う……」  ジジジ……と肉が焼ける音が聞こえ、焦る気持ちが募っていく。

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