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第1406話

 その強靭な精神力に舌を巻くのと同時に、自分の未熟さを思い知った。せっかく砂を歩き切ったのに、結局兄の世話になるとか情けないことこの上ない。  兄がいなければ家に帰ることもできないのか、俺は……。 「兄上、すまない……」 「いいんだよ、これも修行のうちさ」 「でも……」 「お前はちゃんと砂を歩き切っただろう? 初めてであそこまでできるのは大したものだよ。普通は途中で転んだり諦めたりして、リタイアすることが多いんだから」 「そう、かな……」 「そうだよ。歩き切ってから気が抜けてしまうのも、修行あるあるさ。そうやって失敗しながら、ちょっとずつ強くなっていけばいいんだ」 「…………」 「もう少しで泉だから、あとちょっと我慢してて」  背負っている重さなど微塵も感じさせず、兄はスタスタと山を下りていく。  自分ももう一度狂戦士モードになれれば背負われなくて済むんじゃないか……と思い、頑張って気合いを入れようとしたけれど、足の痛みがひどくて結局集中できなかった。激痛を我慢し続けているせいか、変な脂汗が止まらない。 「ほら、泉が見えてきたよ」  言われて、アクセルは顔を上げた。目の前には、見慣れたオーディンの泉が広がっていた。  あそこに入れば、この痛みからも解放される……! 「はい、行くよー。そーれっ!」 「……おわっ!」  掛け声と共に勢いよくぶん投げられ、アクセルは空中に放り出された。  そのままドボーンと泉にダイブし、全身に水の冷たさが沁み込んでくる。焼け焦げた足ももれなく泉に浸かったが、生憎感覚組織が焼けてしまって冷たさを享受することができなかった。 「う……ごぼっ」  アクセルは慌てて浮上し、泉から顔を出した。そして岸に向かって泳いでいき、泉の縁で温泉のように全身を浸した。  ――くそ……早く治ってくれ……!  泉に入ってもすぐさま足が完治するわけではない。このまま痛みがなくなるまで、しばらくじっとしていなくてはならないのだ。

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