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第1407話

 狂戦士モードをキープできない自分が未熟なのはわかっているものの……やっぱり我慢できない痛みというのは存在する。  修行場にいる時から結構な時間我慢し続けてきたせいで、そろそろ痛みに耐えるのも限界になってきた。 「気絶しちゃってもいいよ? 治ったら私が家まで運んであげる」  兄が泉の縁に腰掛け、足だけを浸けてくる。  顔を上げて兄の表情を窺ったが、痛みなど全く感じていないようだった。未だに狂戦士モードが続いているのか、いつもと変わらず涼しい顔をしている。  これほどまでの精神力は本当に羨ましい。どうしたらそこまで強くなれるのだろう……。 「……兄上は強いな、本当に……」  痛みと戦いながら、小さく呟く。気を失うことだけは意地でも耐えた。 「兄上の強さを目の当たりにする度に、自分自身の未熟さに情けなくなってくるよ……。俺だって二十年以上鍛錬してるのに、一向に兄上に追い付いている気がしない……。トーナメントを勝ち上がれるかすら、怪しくなってきた……」 「ありゃ。始まってもいないうちからそんな弱気になっちゃうわけ?」 「……いや、すまない。これはいつものネガティブ病だ。俺も早く兄上みたいになりたいと思っただけだ」 「そうかい?」 「……兄上の鋼のメンタルが羨ましい。俺なんかすぐに揺らいでしまうもんな」  自虐気味にそう言ったら、兄がポンと頭を撫でてきた。  そして同じように自虐気味にこう言われる。 「お前はよく『羨ましい』って言うけど、私がここまで強くなれたのはお前がいたからなんだよ? お前がいなかったら、私はヴァルハラにすら来ていないかもしれない」 「……そうだろうか」 「そうだよ。お前がいたから、何が何でも私が守らなきゃって思えたんだ。それには自分が強くないとね。何かが起きた時、力が足りなくてお前を守り切れなかったら悔やんでも悔やみきれないだろう?」 「それは……」

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