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第1408話
「というか、今でこそ年齢は同じだけど生まれた時は十一歳も差があったんだよ? そんなすぐに追い付かれても困るって。数年で追い付かれちゃったら、それはそれで私の立場がないというか」
言われてみれば、もっともな話である。もともと十一年もの差があったのに、それを僅か数年で埋められるはずがない。
ヴァルハラで生活しているとつい忘れがちだけど、兄の方が圧倒的にキャリアが長いのだ。
こちらを撫でながら、兄が続ける。
「それに、お前は生前に比べてかなり強くなったよ。本当に別人みたいに強くなった。私と比べちゃうから霞んで見えるだけで、ランク二桁って相当な強者なんだ。ヴァルハラには粒揃いの戦士しかいないから、その中で上位に食い込むって本当にすごいことだよ。だからもっと自信を持ちなさい」
「兄上……」
「私は、お前がトーナメントを勝ち上がって挑戦状を持ってきてくれるって、信じてるからね」
兄の思いを聞いていたら、涙が出そうになった。
この兄は、こんな自分のことを信じてくれているのか。罠にかかりやすいししょっちゅう弱気になるし何かと迷惑かけまくりな自分でも、期待してくれるのか。
だったらネガティブになっている場合じゃない。少しでも兄の期待に応えられるよう、引き続き頑張らなくては。
「……ありがとう、兄上。頑張るよ」
そう言ったら、兄は嬉しそうに微笑んでくれた。
そのまましばらく泉に浸かっていると、
「ところで、足は治った?」
「ん? ……ああ」
言われて、足に意識を向けてみた。
あれほど痛かった感覚はいつの間にか消え、水の冷たさをしっかり感じることができる。試しに手を伸ばして触ってみたら、足の裏側の皮膚がべろんとめくれて来た。治りかけの皮膚が剥がれてしまったせいで、真皮層が剥き出しになってしまったようだ。地味に痛い。
アクセルは慌てて泉の縁にしがみつき、足を浸けたまま言った。
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