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第1409話

「え、ええと……もうちょっと治さないとダメかも」 「そうかい? 私はもう治った気がするな」 「そ、そうか。じゃあ兄上は先に帰っても……」 「いや、いいよ。お前が完治するまで待ってる。一緒に帰ろう」  そう言ってくれたので、アクセルはお言葉に甘えてそのまま泉に浸かり続けた。  この泉、怪我がひどいと結構な長時間浸かることになるんだよな……治るのは嬉しいけど、身体が冷えてくるんだよな……せっかく魔法の泉なんだから、温泉みたいに温かくならないかな……などと、しょうもないことを考える。  お互い無言で時間が過ぎるのを待ちながら、怪我をした他の戦士が利用しに来る様子を眺めた。 「そう言えば、他の人の死合いをしばらく見てないな……」  自分の鍛錬に必死で、他の人がどれほどの強さを持っているか確認していなかった。  基本的に観戦は自由だけど、そろそろ誰かしらの死合いを見ておきたいところだ。特に上位ランカーの死合いはいろいろと勉強になるし。 「おや、誰か見たい死合いでもあるの?」 「いや、明確にこれっていうのはないんだけどな。でも、たまには見て勉強するのもアリだろ? ミューが戦っているところとかほとんど見たことないし、ちょっと興味がある」 「あー……ミューね。お前がどうしても見たいなら頼んであげてもいいけど、正直あまり参考にならないよ? ランゴバルトみたいなランキング二位の猛者だったらともかく、それ以外の戦士が相手だった場合は、一瞬で終わっちゃうから逆につまらないかも」 「そ、そうか……」 「参考にするなら、自分と戦闘スタイルが似ている上位ランカーにするといいと思う」 「戦闘スタイルが似ている上位ランカーねぇ……?」  そんなこと言ったら、兄上一択になってしまうぞ……と心の中で呟く。  でも兄の死合いはしばらく予定されていないし、そもそも競争率が高いからそんな気軽に観戦できるものではない。  そうじゃなくて、もっと軽い気持ちで観戦できる死合いはないだろうか……。

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