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第1410話

「まあ、死合いの観戦はチャンスがあったらするとして、お前はこれからのトーナメント頑張りなさい。最初の方は楽勝だろうけど、勝ち上がるにつれてお前より強い人も現れてくるんだからね。チェイニーくんやアロイスくんとも戦うことになるかもしれないんだし、油断は禁物だよ」 「ああ、わかってる。まずは初戦に勝利しないとな……」  初戦の相手は確かショーンという戦士だった。聞いたことがあるような、ないような……という曖昧な相手だが、何にせよ自分がやるべきことは変わらない。  トーナメントを勝ち上がり、兄に挑戦状を叩きつける。それで長年の夢は達成される。 「楽しみだねぇ。お前と公式で死合えるのって、何ヵ月ぶりだろ? いやもう何年ぶりとか、そんなレベル?」 「かもしれないな。俺が初めて兄上と死合ったのは、ラグナロクが始まるずっと前だったから……」  あの時はこちらもヴァルハラに来たばかりで、全然実力が追い付いていなかった。ランキング三位の強者とほとんど底辺の戦士が戦うなんて、今のマッチングシステムでは起こり得ない(今は、なるべくランクの近い人がマッチングする)。  そういう意味では、あれは奇跡の死合いだった。滅多に戦えない相手と公式に戦えて、初めて本気で斬り合った。  惜しむらくは自分の実力が全然足りなくて、一方的に滅多切りにされて終わってしまったところか。自分がもっと強かったら、もっと楽しい死合いができたのに……と悔やんだものだ。  ――でも、今度こそは……。  ランクも二桁まで上がった。実力もついてきた。兄と同等とは言わないが、食らいつけるレベルにはなってきたはず。  今度こそ、今までになく充実した死合いができるに違いない。  アクセルは再度足元に触れ、どのくらい治っているか確認してみた。もう皮膚も剥がれて来ないし、痛みもない。いつもの足の感覚が戻っていた。 「兄上、お待たせ。もう完治したよ。家に帰ろう」

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