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第1411話

 泉から上がり、きちんと靴を履いて家に戻った。帰った途端、ピピが庭からすっ飛んできて、「おなかすいた」と訴えてきた。  アクセルは昼食を作りがてら、ピピの野菜スープも一緒に煮込んだ。そして完成したスープ鍋をベランダに持っていき、自分たちもそこで食事をとった。昼食といっても、既に三時近くになっていたが。  ――泉に入っていたせいか、随分遅くなってしまった……。  本当はあんな怪我をする予定ではなかったのだ。確かにケイジの修行場はどれも難しい物ばかりだったけど、ちょっと頑張ればクリアできるくらいの修行に留めるつもりだった。  だいたい、修行の度に毎回泉や棺に入っていたら、回復の時間がかかりまくって修行の時間自体が少なくなってしまう。さすがのアクセルもそこまで無謀なことはしない。  兄みたいな軽い火傷なら泉に入っている時間も短くて済んだものを、なかなか上手くいかないものだ。  怪我が多いのは未熟な証拠だな……などと考えつつ、アクセルは空になった食器を片付けた。  キッチンで皿やフォークを洗っていると、兄が後ろからこちらをハグしてきた。  その抱き締め方が妙にいやらしくて、反射的にぞくりと鳥肌が立った。 「あ、兄上……? 何でしょうか……?」 「何って、帰ったら『体幹チェックしてあげる』って言ったでしょ? せっかくだから、今からチェックしちゃおうね」 「えっ……!? で、でも午後の鍛錬が……」 「今からじゃ庭でいつもの鍛錬しかできないって。それに、この体幹チェックも頑張れば体幹トレーニングになるし。今日はそれでいいじゃない」 「よくはないだろ! これからトーナメントが始まるのに……あっ!」  こんなことしてる場合じゃない、と抵抗しようとしたのだが、尻をペシンと叩かれて一瞬力が抜けた。  その隙に壁に身体を押し付けられ、太ももの間に膝を入れられて脚が閉じられなくなってしまう。背中に当たっている壁がひんやりして少し身震いした。

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