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第1413話*
「うっ、う……んく……」
震えそうになる中、一生懸命左足だけで立ってみせる。下っ腹に力を込め、ふらつく身体をどうにか持ち直し、倒れないように堪え続けた。
――こ、これくらいなら何とか……。
指なら本物の欲望より断然楽だし、挿し込まれているのもまだ一本である。
なるべく下腹部に意識を向けないようにして、体幹に力を入れたまま平常心を保てば何とかクリアできるはず。
そう自分に言い聞かせ、アクセルは与えられる刺激を流し続けた。
あえて全く関係ないことを考え、意識を逸らそうと努める。
そう言えば、ピピと見つけたあの謎の道はどうなったかな。今もあそこにあるのかな。ピピは「幻影の道」と言っていたけれど、実際に何が出てくるんだろう。
アクセルは特に会いたい人とかいないけど……例えばアロイスみたいに故郷の家族に会いたいと思っている人には、家族の幻が出てくるのかもしれない。
でももし幻の兄が現れてそちらに手招きされたら、騙されてついて行ってしまいそうだ。実際自分は、ロキが化けた偽物とか、コピーの兄とかに騙されたことが何度もあるし……それに関しては気を付けなければならない。
「っ……」
そんなことを考えていたら、唐突に指が抜けていった。
中の刺激がなくなった途端、体幹も緩んでがくんと膝の力も抜けてしまう。
「はぁ……はぁ……」
アクセルはその場に崩れ落ち、床にうずくまって荒い息を吐いた。
よかった、何とか最後まで耐えきることができた。これなら変なお仕置きをされずに済む。
そう安堵していたら、兄は不気味に笑いながらこんなことを言い出した。
「よしよし、じゃあ今度は逆の足でね。左足上げてみて」
「えっ……!?」
ぎょっとして兄を見上げる。冗談を言っている顔ではなく、緩やかに微笑みながら「早く」と訴えていた。
「う、嘘だろ……!? これで終わりじゃないのか……!?」
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