1427 / 2204

第1427話

 きっとこの脆さはどうにもならないから、兄に慰めてもらって気持ちを切り替えられた後は、いつも通りしっかり頑張ればいいと思う。誰だって落ち込むことはあるんだから、それをどう乗り越えるかが重要だ。  乗り越える方法がわからず、いつまでもウジウジしているよりかずっとマシである。……多分。  半ば開き直りのようなことを考えつつ、アクセルは顔を上げた。 「じゃあ兄上、俺は庭で鍛錬してくるよ。何かあったら声をかけてくれ」 「はいはい、頑張って。唐突な思い付きでまたどこかに行かないようにね」  そう釘を刺され、苦笑いして庭に出る。  庭ではピピが素振り用の丸太をガリガリ齧り、前歯の伸び具合を調整していた。既に丸太はボロボロだったが、これはうさぎあるあるなので仕方がない。  ……とはいえ、ピピには鍛錬に使っている新しい丸太ではなく「こっちの古い丸太を齧ってくれ」と教えたはずなんだけどな……。 「ぴぇっ!?」  アクセルが出て行った途端、ピピは丸太を齧るのをやめ、しれっとそっぽを向いた。新しい丸太を齧ったのがバレて、気まずそうに目を逸らしている。  ――やっぱり、マズいことをしたのは自覚してるんだな。無駄に賢いというか何というか……。  怒るよりもむしろ笑いそうになり、アクセルは齧られた丸太を担いでうさぎ小屋の傍に置いた。そして再度ピピに言い聞かせた。 「ピピが齧っていいのはこっちな。新しい方は鍛錬に使うから遠慮してくれ。あとは自分の小屋や露天風呂を齧らなければいいよ」 「ぴ……」 「じゃあ俺は素振りしてるからな。危ないからあまり近づいちゃダメだぞ」  そう言ってアクセルは、新しい丸太を二センチ間隔で二本立て、その隙間に両手の小太刀を交互に振り下ろした。  どんなに強い戦士が相手でも、こういった基本的な鍛錬を疎かにしてはならない。地味な素振りを繰り返すことで、自分の身体に正確な太刀筋が沁みついていくのだ。

ともだちにシェアしよう!