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第1428話

 最近は太刀筋もほとんどブレなくなってきたし、これなら死合いの時も困らなくて済むかな……と思っていると、 「ぴー!」  唐突に、ピピが横から頭突きをしてきた。 「ぶへっ……!」  いきなりのことで受け身が取れず、小太刀を握ったまま吹っ飛ばされてしまう。  ピピはアクセルなどおかまいなしに、素振り用に立てた丸太をガリガリ齧り始めた。 「ちょ……ピピ、何してるんだよ? きみ専用の丸太はさっき小屋の前に置いただろ。こら、いい加減にしなさい」 「ぴー」 「あーあー……またボロボロにしちゃって……。何なんだ? あの古いのじゃ気に入らないのか? 新しい丸太が欲しいのか?」 「ぴ……」 「……よくわからないな。きみは一体何を求めているんだ?」  ボロボロになった丸太では鍛錬ができないので、仕方なくアクセルはまた新しい丸太に取り替えた。先程取り替えたばかりなのに、こうも丸太の消費が激しいと訓練に支障が出てしまう。困ったものだ。 「ぴー……」  ピピはじっとこちらを見つめ、もぐもぐと口を動かした。そしてたどたどしい口調でこんなことを言い出した。 「このまるた、やわらかい。ピピ、かたいまるた、すき」 「……えっ?」  アクセルははたと手を止めた。  自分が運んでいた丸太を見つめ、小屋の前に置いてある古くなった丸太も眺め、それでようやく合点がいく。  ――ああ、そうか……。これは加工しやすい木材だから……。  ここにあるのは、アロイスがチョイスしたヒノキがほとんどである。ヒノキは加工しやすくて水に強いので、ピピのうさぎ小屋や露天風呂にも使われていた。  でも加工しやすいということは、材質が柔らかいということに他ならない。  何も考えずに、余った丸太をピピの齧る素材として与えていたのがそもそもの間違いだったようだ。  普通のうさぎならヒノキくらいの木材で十分だが、生憎ピピはうさぎの神獣。ヒノキは柔らかすぎて、齧っても歯ごたえがなかったらしい。

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