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第1431話

 アロイスの小屋を出てまだ五分しか経っていないのに、早々に力尽きてしまいそうだった。家まではそれなりに距離があるのに、このままでは辿り着くこともままならない。  これは一度丸太を置いて、家から台車をとってくるしかないか……? でも、そんなことをしたらせっかくもらった丸太を盗られてしまうかもしれないし……。 「う……っ」  そんなことを考えていたら、また重みを感じて膝が折れそうになった。  こういう重い荷物を運んでいる時は、なるべく足を止めてはならない。一度立ち止まったら最後、二度と動けなくなってしまうからだ。あと、できれば丸太も地面に下ろさない方がいい。  でも先程から太ももの筋肉がぶるぶる震え、身体はどんどん重くなり、呼吸すらも辛くなってくる。全身から汗が噴き出て、丸太を抱えている腕が今にも滑ってしまいそうだった。  ――ああもうムリ……!  とうとう力尽き、地面に倒れそうになった次の瞬間、ふわっと丸太が浮いて軽くなった。 「えっ……?」  誰かが丸太を持ち上げてくれたのか? でも一体誰が……?  とにかく礼を言おうと首を捻ったら、視界に派手な赤い羽根飾りが飛び込んできた。 「何を潰されそうになっているんだ、雑魚が」 「っ……!?」  驚きすぎてすぐには声が出なかった。そこには、アクセルが一番苦手にしている上位ランカーがいたのだ。  ――ランゴバルト様……!?  兜のてっぺんに派手な赤い羽根飾りがあるのは、ランゴバルトの特徴である。見間違えることはない。  だがそうだとしても、ランゴバルトが手を差し伸べてくれたことが意外すぎて、すぐには信じられなかった。実力主義の彼のことだから、下の者が困っている時も「自業自得だ」と放置し、助けてくれることはないと思っていた。  というか、本当にこれ幻じゃないのか? 潰される直前に都合のいい幻覚を見ているんじゃ……? 「いやだぁ、ランゴバルト様ったら。また雑魚だなんて言って。アクセルさんは一応、ランク二桁の強者ですよ。まあそれでも、ランゴバルト様と比べたら雑魚かもしれませんけど」

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