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第1432話

 声のした方を見たら、黒いおかっぱ頭の少年がにこやかに笑っていた。買い物カゴを下げていたが、鍛錬の帰りらしく背中に弓矢も背負っている。 「コニー……?」 「こんにちは、アクセルさん。丸太を担いでトレーニングなんて大変ですね」 「あ、あー……まあ、な……」  本当はトレーニングではなく、ピピのための丸太を持って帰ろうとしただけだが。  アクセルは気を取り直し、しっかりその場に立って礼を言った。 「……ありがとうございます、ランゴバルト様。おかげで助かりました」 「ふん。この程度の丸太も運べないとは、やはり雑魚は雑魚だな。身の丈に合ったトレーニングもできないとは」 「す、すみません……」 「まあまあ、ランゴバルト様。アクセルさんはきっと、早く強くなりたいんですよ。トーナメントも始まりますし、張り切っているんでしょう」  上手くフォローを入れつつ、コニーが言った。 「せっかくですし、この丸太アクセルさんのお家まで持って行ってあげませんか? 途中までなら、帰り道も同じですし」 「え、でも……」  そんなことさせたら殴られるんじゃないか……と少しビビッていると、コニーは重ねてこんなことを言った。 「ランゴバルト様なら、こんな丸太運ぶの楽勝ですもんね? ランゴバルト様の力強さ、また見てみたいです」  傍目から見るとかなりわざとらしい発言だったが、当のランゴバルトはまんざらでもない様子だった。  重いケヤキの丸太を担ぎ直すと、ほとんど何も言わずにノシノシ歩いて行ってしまう。  ――ええ……? 今ので言うこと聞くのか……?  自分がコニーと同じように頼んでも、絶対言うことを聞いてくれない気がする。何故ランゴバルトはコニーの言うことだけ聞くのだろう……? 「……コニー、すごいな。あのランゴバルト様に言うことを聞かせるなんて」 「え、別にすごいことはしてませんよ? ランゴバルト様はお優しいので、『力を貸してください』と言えば何も言わずにああやって重い物を持ってくださいます」

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