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第1435話
「それは……訓練での出来事なんだから仕方ないだろ」
「私は嫌なの! 死合い以外ではなるべく棺に入りたくないの!」
……なんだ、その謎のこだわりは。
「子供みたいなこと言わないでくれよ……。それにランゴバルト様、『今度模擬戦放棄したら家まで押しかける』って言ってたぞ?」
「ええー? なんでそこまで? もー……模擬戦の相手ならジークにでもやってもらえばいいのに」
ぶーぶー不満を垂れ流している兄。余程面倒臭いのか、終始口を尖らせて文句ばかり言っていた。
そんな兄を放置し、アクセルは丸太の側にピピを呼びつけた。
「ピピ、硬い丸太をもらってきたぞ。これなら満足するんじゃないか?」
「ぴー♪」
ピピは喜び勇んで丸太に飛びついた。しばらくガリガリ齧っていたが、今度のケヤキはちょうどいい歯ごたえがあったのか、興奮したように両耳をパタパタさせていた。
「ぴー♪」
「そうか、ならよかった。でもこれ、硬い分ものすごく重いんだ。だからこのままじゃ動かせない。手軽に持ち運べるように、もっと短くカットするからちょっと待っててくれ」
そう言って、アクセルは武器倉庫からDIY用のノコギリを持ち出してきた。
それでまずは半分にカットして……とやろうとしたのだが、いつもの要領でギコギコやってもなかなか歯が入らない。ここに来て初めて、この丸太の硬さを思い知った。
――う……全然切れない……。どうすればいいんだ、これ……。
もしかして、硬い丸太専用の道具でもあるのだろうか? 今更だけど、これもアロイスに切ってもらった方がよかったかもしれない。
「……で、お前はさっきから何をやってるの?」
丸太と格闘している弟を見かねてか、兄が声をかけてきた。
アクセルはこれ幸いとノコギリを押し付け、その間に自分は庭で軽く走り込みをすることにした。トーナメントの初戦は明後日なのだ。あまりのんびりしていられない。
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