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第1437話

 ドゴーンという派手な音と共に大きめの石が砕け、周りに欠片が飛び散る。破片が飛んでくるのを嫌ってか、彼の近くには誰もいなかった。  ――でもあの人、おしゃれな髭が生えてるな……。使っているのもハンマーだし、もしかして……。  アクセルは念のため、近くで休憩している戦士に聞いてみた。 「すみません。あそこでひたすらハンマー振っている人は、ショーンさんですか?」 「ああ、そうだよ。死合いが近くなると、ここに来てああして石を砕いて行くんだ。なんかルーティンワークらしくて、あれをやると調子がよくなるらしい。本人なりのゲン担ぎなのかね」 「へぇ……そうなんですか。ありがとうございました」  ゲン担ぎと聞いて、なるほどと思った。  アクセルはあまり意識したことがないが、大事な死合いの前にああやってゲン担ぎしたりルーティンワークを重視したりする人がいるのは知っている。そうすると死合い本番でも緊張せず、いつも通りの力を発揮できるのだそうだ。  ――俺も、何かああいうのやってみようかな……。  そんなことを考えつつ、慎重にショーンに近づく。飛び散る小石をかいくぐり、彼が一息ついたところで横から声をかけた。 「あの……すみません、ショーンさんですか?」 「ん?」  彼がハンマーを下ろしてこちらを見る。綺麗にカットされたちょび髭が特徴的だった。 「誰だきみは? 俺に何か用か?」 「俺、アクセルです。せっかく会えましたので、ご挨拶に伺いました。明日の死合い、よろしくお願いします」 「ああ、そういうことか……。ご丁寧にありがとう」  ショーンもようやく合点がいったのか、「ふむ」と顎に手を当ててきた。そしてこちらの全身を眺め、小さく首をかしげる。 「それにしてもきみ、初見じゃないな。どこかで見たような気がするんだが……」 「あ、それは……多分、ランゴバルト様に引率された狩りでのことだと思います。あの時はお世話になりました」

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