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第1439話

 ショーンは、自分より格上の戦士だ。普通に戦ったら苦戦は必至である。  その人が「不戦敗でいい」と言ってくれているのは、優勝を目指しているアクセルにとってはメリットしかない。  強敵はまだまだたくさん控えているし、その分初戦くらいはいいスタートを切りたかった。  ――でも……。  だいぶ迷った挙句、アクセルは首を横に振った。 「いえ、大丈夫です。正々堂々戦いましょう。それなら、どんな結果になっても悔いはないです」  もちろん、明日は絶対に勝ちたい。  だからと言って、相手の不戦敗で勝つのは違うと思う。そんなので勝っても嬉しくないし、何だか八百長みたいでスッキリしない。兄にもきっと叱られてしまうだろう。  だから正々堂々戦う。それで負けてしまったら……残念だが、まだ兄に挑む実力がなかったんだと思って諦めよう。 「そうか。きみ、なかなか真面目なんだな。馬鹿正直というか」 「馬鹿正直、ですか……」 「どうしても死合いに勝ちたい時はな、死合い内容なんか度外視で勝利を取りに行くもんなんだぜ? 堂々とした勝ちにばかりこだわっていると、ランクなんていつまで経っても上がりゃしない。勝たせてくれる時は素直に勝たせてもらった方がいいと思うぞ」 「……そうなんですか? 堂々とランクを上げて行った上位ランカーもいると思いますけど」 「そりゃ、普段の死合いは真面目に取り組んでいるだろうさ。でも、例え相手が来なくて不戦勝になった場合でも『勝ちは勝ち』と割り切れるのが上位ランカーだ。『不戦勝だから実力じゃない』なんて考えない。意外かもしれないけど、その辺は上位ランカーほど現実的なんだよ」 「…………」 「ま、きみが正々堂々戦おうって言うなら、俺はそれで構わない。明日は全力でぶつかろうじゃないか」 「は、はい……よろしくお願いします」  ショーンが再びハンマーで岩を砕き始めたので、アクセルは急いでその場を退散した。

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