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第1447話※

 振り回されるハンマーをかいくぐり、もう一度懐に飛び込む。攻撃は避けているはずなのに、素振りの風で服や皮膚がどんどん切れて行き、二の腕や太もも、脇腹からも鮮血が飛び散る。  ――そうか、狂戦士モードの時は風ですらも刃になるから……。  武器を避けるだけでは、完全に攻撃を避けたことにならない。振り下ろす時の風圧、地面を叩き割った時の衝撃、それら全てが武器となり、こちらに襲い掛かってくる。  もう全てを回避するのは不可能だ。回避に神経を使うくらいなら、斬られること前提で飛び込んでしまった方がよい。  どうせこちらの命も長くはもたないのだ。ならば肉を切らせて骨を断つ。これしかない。 「たあああっ!」  右の小太刀で首元を斬りつけた後、すぐさま左の小太刀で二撃目を叩き込む。  一撃目は首を捻って避けられたが、二撃目の小太刀が無防備な鎖骨部分を切り裂いた。ぱっくり肉が裂け、そこから勢いよく血が噴き出す。噴き出した血が顔にかかり、アクセルの視界をも真っ赤に染めた。 「……まだだっ!」  反撃と言わんばかりにショーンが拳を突き出してくる。  咄嗟に顔を引っ込めたものの、顔の中央を殴られ、ゴリッと嫌な音が鼓膜に響いた。鼻の骨が折れ、前歯も欠けてしまい、脳震盪のように頭もくらくらしてくる。  目が血で潰れているので前は見えなかったが、視界が生きていたら世界がぐるぐる回って見えたことだろう。  ――ああくそ……あと一息なのに……!  一度距離を取って大きく呼吸をする。  今のは致命傷になったんだろうか。かなりの勢いで血が噴き出していたから、時間が経てば出血多量で死ぬとは思う。  けれど、それまで自分が生きていられるかも問題だ。  体力が尽きて自分が先にダウンしてしまったら、ここまでの頑張りが無駄になってしまう。もう全身ボロボロだけど、ここまで来たら何としても勝ちたい。勝って兄に勝利の報告をしたい。

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