1448 / 2014

第1448話※

「ふー……ふー……」  正面でハンマーが振り下ろされた気配がして、アクセルは音と感覚でそれを避けた。ホズに教えてもらった「視界に頼らない戦い方」が、こんなところでも活きるとは思わなかった。 「はぁっ!」  そこにいるであろうショーンに向けて、小太刀を横に薙ぎ払う。一撃目は服の上から鎧を傷つけ、二撃目は傷ついた鎧の隙間から直接肉を切り裂いた。  日々の地道な素振りの成果か、以前よりも刀を振るった時の切れ味が増しているようだった。太刀筋が整っている証拠だ。 「ぐっ……」  今度はハンマーの柄で胸部を突かれそうになり、ほとんど勘でそれを避ける。が、結局避けきれずに膝頭を強打され、膝の皿を割られる羽目になった。  がくん、と膝が崩れそうになり、すんでのところでその場に踏ん張る。  かなり大きな隙ができてしまったが、追撃が来ると思いきやそれらしいものはなかった。  どうやらショーンの方も、大量の出血で動きが鈍ってきているようだった。 「……すげぇな、アクセル。目を潰されてもちゃんと戦えるのか。それができるヤツは、上位ランカーでもなかなかいないと思う、ぜ……」  彼の声に変な音が混じっている。喉元にも血が這い上がり、上手く声が出せないでいるようだった。彼自身の限界も近いのだろう。 「さあ、次で決めよう!」 「……はいっ!」  最後の力を振り絞り、もう一度ショーンに向かってダッシュする。  懐に飛び込み、両手の小太刀を十字に振り下ろし、確実な手応えと共に肉と骨を断ち切った。どこを斬ったかは直接見えなかったが、急所に近い箇所を斬ったことは何となくわかった。 「……がはあっ!」  ショーンも守りを捨て、渾身の一撃をこちらに叩き込んできた。  巨大なハンマーで頭を叩き割られ、頭蓋骨が陥没する音を聞いた。ついでに頭を支えていた頸椎も損傷し、本当の意味で目の前が真っ暗になってしまう。  ――ダメだ、せめてヴァルキリーの声が聞こえるまでは……。  立っていなくちゃ……と思ったのに、結局力尽きて地面に崩れ落ちた。 『死合い終了! 勝者は――』

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