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第1450話(フレイン視点)

 世界樹(ユグドラシル)の前には何名かの戦士がおり、それぞれスケジュールを確認したりビラに目を通したりしているみたいだった。 「よう、フレイン。相変わらずヒマそうだな」 「おや、ジーク。きみも仕事がなくてヒマそうだね」  たまたまジークに遭遇したので、フレインは軽く愛想笑いを返した。  こういう他愛のない世間話をするには、ジークみたいな常識人が一番いい。他の友人ももちろん好きだけど、ミューやユーベルはアクが強いというか、軽い気持ちで会話するには向いていないなと思うことが多かった。  まあ、アクセルに見られたらまた「元カレと会話してる」などと難癖をつけられてしまうけど。  ――ええと、弟の名前は……。  トーナメント表の細かい文字を一生懸命追いかける。終わった死合いには、赤いペンで勝ち上がりのマークがつけられており、誰が勝ったかすぐにわかるようになっていた。  アクセルとショーン。マークが伸びているのはどちらだろう……。 「あっ……」  アクセルの名前から赤い線が伸びていて、フレインは目を見張った。  あんなに「格上と当たっちゃった、どうしよう」と嘆いていた弟だが、自分の応援がなくてもしっかり勝利を収めてきたみたいだった。 「勝ってる! あの子、勝ってるよ! ねえ、すごくない? ちゃんと格上の相手に勝ってきたよ」  隣にいたジークをぶんぶん揺さぶり、弟自慢をする。  するとジークも苦笑いしながら、「はいはい」と頷いてきた。 「弟くん、めちゃくちゃ頑張ったみたいだぞ。すげー接戦で、いい死合いだったらしい。最後はほんの一瞬の差で、相手の方が先に力尽きたそうだ」 「そうなんだ? それは見たかったなぁ」 「てか、なんで見てないんだよ。仕事でも入ってたのか?」 「いや、前日にランゴバルトと模擬戦やっちゃって……。白熱して棺行きになったら、寝過ごしちゃったんだ」 「へえ、そりゃザマァないな。弟くん、きっと泣いてるぜ」 「反省してるよ。アクセルが復活したらたくさん褒めてやらなきゃ」

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