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第1456話

 兄はいきなり飛びついてきた弟を当たり前のように受け止め、優しくこちらの頭を撫でてくれた。 「よしよし、よく頑張ってきたね。ちゃんと戦えて偉かったよ、おめでとう」 「違うんだ……。そうじゃなくて、何というか、その……」  変な夢を見たから……とは言えず、アクセルは恐る恐る顔を上げた。 「兄上は……俺のランクが上がったからって、急に離れて行ったりしないよな……?」 「ああ、うん。離れたりしないよ。一時は『そろそろ弟離れした方がいいかな』って思ってたけど、よくよく考えたらランクが上がったってお前のそそっかしいところは変わらないもんね。だから私はずっと、お前を近くで見守ってる。お前が嫌だって言ってもお節介し続けるよ。なんで?」 「いや……それならいいんだ。変なこと聞いてすまなかった」  苦笑いをしたら、兄はにこりと微笑んで頬にキスしてくれた。  改めて家に入ったら、テーブルの上は買ったばかりの食材でいっぱいになっていた。 「さ、今日はごちそうにするよ。お前が食べたいものリクエストして。何でも作ってあげるからね」 「あ、ありがとう……。でも特に食べたいものとか思いつかないんだが……」 「え、そう? 棺から出てきたばかりなのに、お腹空いてないの?」 「多少は空いてるけど、そんなガッツリしたものはいらないよ……。というか、何でごちそうにするんだ? 食事はいつも通りでいいって」  そう言ったら、兄は「おや」と首を傾げた。 「……お前、もしかして自分の死合い結果わかってない?」 「あ、うん……。でもヴァルキリーの判定を聞く前に倒れちゃったから、きっと負けだったんだろ? 初戦から敗退しちゃってごめん……」 「ええ? 何言ってるの。お前、ちゃんと勝ってたよ。だからさっき『おめでとう』って言ったのに」 「……は? え、そんな……ホントに勝ったのか?」 「ホントだって。何なら結果見に行ってくれば? というか、ものすごくいい死合いだったのに見られなくてごめんね。お兄ちゃん、一生の不覚だよ」

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