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第1458話
その夜。当たり前にベッドに入ろうとしたアクセルを、兄が後ろから抱き締めてきた。
「兄上……? どうしたんだ?」
「いや、こっちのご褒美は欲しくないかなーって」
就寝着の上からいやらしく胸元を撫でられ、ぞくっと背筋が震えた。
そのまま固まっていると、追い打ちをかけるように耳元で囁かれる。
「これはご褒美だから、お前の好きなようにしてあげるよ。うんと褒めて、いっぱい可愛がって、優しく愛してあげる」
「え……ええと……」
「どう? そういうの、いらない? いらないなら無理にとは言わないけど、私はお前にいいことする気満々でいるよ」
「っ……」
「……どうする? アクセル」
挑発的に尋ねられて、より一層ぞくぞくしてきた。
どうもこうも、兄がやる気なら自分は当たり前に付き合うつもりでいる。死合い後はアドレナリンが放出されがちだし、そういう意味でも発散は必要だ。
というか、かなり正直なことを言うと「今夜は多分そういう流れになるだろうな」と覚悟していた。格上相手に勝利したことは事実だし、ご褒美の口実で兄が誘ってくることは最初から想像できた。
だから、そういう雰囲気になること自体は全然かまわない。
――でもこれ、俺が答えなきゃいけないのか? 「抱いてください」って……?
正直それはかなり恥ずかしいのだが。こういうことは直接口にしたくないというか、言わせないで欲しいというか、どちらかというと自然な流れで当たり前に進む方が好きだ。
何なら、強引にベッドに入って来られる方がまだ羞恥心は少ないかもしれない。
「あの……俺は、その……兄上の好きにしてもらいたいんだが……」
小さな声でそう答えたら、兄は「おや」と首をかしげた。
「好きにしちゃっていいのかい? それだといつもと変わらないけど、後悔しない?」
「……しないです。兄上が満足するなら、俺はそれで……」
「ふふ、そっか。それなら私の好きにしちゃおうかな」
後ろから顎を掴まれ、くいっと首を捻られて立ったまま唇を塞がれた。
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