1478 / 2204

第1478話

「うーん……?」  特に何かが劇的に変わった感じはしない。メキメキ力が沸いてくることもなければ、やる気が込み上げてくるわけでもない。  ――だよな、所詮お菓子だし。  元気を出したいというのも、単に「疲れた時に糖分補給をしたい」とか、そういう意味で言ったのだろう。狩りの時はあまり大量の荷物を持って歩けないから、ポケットに入れておける飴玉は重宝するのかもしれない。  気を取り直し、アクセルは庭で鍛錬を再開した。  まず走り込みをし、その後で筋トレ、その次は素振りを……と思い、ピピと一緒に庭を走り回る。  ところが、いつもは一〇周くらいで息切れするはずなのに、この時は何故か二〇周走っても息切れしなかった。それどころか、まだまだ余裕で走れる気がした。 「……あれ、おかしいな。何だかいつもより体力に余裕がある」 「ぴ?」 「まさかこれがキャンディーの……? いや、そんな……」 「ぴー」 「ああごめん、何でもないよ。トレーニングの続きをしようか」  一度汗を拭い、ハチミツ入りレモン水で水分補給をして、お昼まで黙々と鍛錬を行う。  兄は仕事で帰って来なかったので、自分とピピの分だけ昼食を作った。  野菜スープを煮込み、残っていたイノシシ肉を焼いてサイコロ状にカットし、パンをスライスして皿に盛る。  それを庭に持っていき、ピピと一緒にランチした。  そして午後も同じように鍛錬をしたが、夕方までぶっ続けで身体を動かしても全く疲れが出なかった。普段は小休止を挟みながら鍛錬するのに、何故今日に限ってこんなに体力が保つのだろう。 「ただいまー」  兄が帰ってきた。  タイミングがよかったのでアクセルも鍛錬を切り上げ、片付けをしがてら兄を迎え出た。 「おかえり。今日の狩りはどうだった?」 「うん、いい感じの大物がとれたよ。これ戦利品ね」  と、ドサッと肉の塊をテーブルに置く。大きな鹿肉で、まだ少し血が滴っていた。新鮮な証拠だ。

ともだちにシェアしよう!