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第1479話
「今日はこれですき焼きにでもしようか。残ったら燻製にしてとっておこう」
「ああ、そうだな。ところで、兄上にひとつ聞きたいことがあるんだが」
「うん? 何かな」
「このキャンディーなんだが……これは一体何なんだ?」
と、保管していた瓶を取り出す。自分と兄でひとつずつ食べてしまったので、残りは二つだ。
「何って、ミューからもらったんでしょ。それ以外に何かあるの?」
「いや、キャンディーの効用がな。これひとつ食べただけで、体力がすごく増えたような気がしたんだよ。どういうことなんだ?」
「ああ、そういうこと? というかお前、知らずにこれもらってたのか。それはそれで驚きだなぁ」
やや呆れたように兄が笑い、こう説明してくれた。
「これはヴァルハラのハチミツを煮詰めて固めたキャンディーなんだ。栄養価が高くて、一粒食べるだけで元気になるって言われてるんだよ」
「そうなのか?」
「そ。お前も以前、ハチミツ採りに行ったことあるでしょ? ハチはほとんど休まずにミツを集め続けているから、スタミナが本当に凄まじいんだよ。その成分がハチミツにも含まれているから、食べると元気になるのかもしれない」
「なるほど……」
「というかお前、普段トレーニングする時ハチミツ入りレモン水飲んでるじゃない。それと同じハチミツだよ? 知らなかったの?」
「う、それは……レモン水に入れているハチミツはたいした分量じゃないから、そこまで効果を感じなくて……」
「そう? 時々飲むホットミルクにもちょっと入れてたのに。お前、ベッドの上では敏感なのにこっち方面は鈍感なのかな」
「そ、そういう言い方はやめてください……」
顔を赤くしていると、兄は高らかに笑い飛ばしてきた。そして鹿の塊肉をキッチンに持って行きがてら、言った。
「まあ、キャンディーが気に入ったなら自分でも作ってみるといいよ。あれ、ハチミツとミルクを煮詰めれば作れるから。お前は料理上手だし、すぐ作れるでしょ」
「あ、ああ……そうだな」
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