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第1480話
「そんなことより、先にシャワー浴びてきたら? 今までずっと鍛錬していたんだろう? ピピちゃんとお風呂に入っておいで」
そう言われたので、アクセルは庭の露天風呂でピピと一緒に汗を流した。
ピピをスポンジで擦ってあげつつ、自分も身体を洗い、シャンプーやリンスを使って髪も洗う。そろそろお風呂の日用品も少なくなってきたので、明日市場で補充してこよう。
「ついでにハチミツとミルクも買ってくるか。例のキャンディーも自作したいしな」
「ぴ?」
「……というか、同じ量のハチミツが入ってるなら、普通に焼き菓子とかでもいいはずだよな? それこそクッキーとかケーキとか、そっちの方がお茶のお供にもなる気がする」
「ぴー?」
「ああごめん、こっちの話だ。今度ハチミツ入りのお菓子を作るから、そしたらピピにもあげるからな」
そう言ったら、ピピは嬉しそうに耳をパタパタ上下させた。
泡まみれの身体をシャワーで流し、タオルで水気を拭き取って家に戻る。
キッチンでは、鹿肉を綺麗に捌いた兄が大きい鍋を用意していた。
「ふふ、お前と鍋をするのは久しぶりかも。ガッツリしたステーキもいいけど、鍋はシェアするのが純粋に好きなんだよね」
と、ウキウキで鍋と食材をテーブルに運んでいる兄。
シェアするのが好きと言っているけれど、兄は肉がメイン、自分は野菜がメインになりがちなので、ひとつの鍋でお互い好きなものを食べ合っているにすぎない。
まあ、食材の取り合いで喧嘩にならないのはいいことだ。食べ物の恨みは怖いし。
「明日も私、狩りの引率だからね。お前は鍛錬頑張って」
煮込んだ肉を味わいながら、兄が言った。アクセルはくたくたに煮えた野菜を取り分けた。
「……え、またか? そんな連続して仕事が入るなんて珍しいな……」
「うん。なんか今はトーナメント中だから、死合いの近い人は軒並み仕事を免除されているらしいんだ。だからトーナメントに組み込まれていない上位ランカーは、もれなくみんな仕事増やされているんだよね」
「ああ、そうなのか……」
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