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第1481話
言われてみれば、自分もここしばらく仕事らしい仕事の予定が入っていない。
非番ならその分たくさん鍛錬できてラッキー……と安易に考えていたけれど、そのシワ寄せが上位ランカーにいっているのだとしたら少し複雑だ。
兄も、本来なら仕事が入った次の日は非番になるはずなんだけどな……。
「ふふ、傲慢なヴァルキリーたちもたまにはいいことするね。『死合いに集中しなさい』って公式が気を遣ってくれるなんて滅多にないよ」
「ああ……まあ、そうかもしれないが」
「そうだよ。だからお前も、次の死合い頑張って。また狩りのお土産持ってくるからね」
「わかった。兄上も怪我をしないよう気を付けてな」
二人で鍋を完食し、ハチミツ入りホットミルクを飲んでその日も普通に就寝した。
***
翌日。アクセルは朝食を食べた後すぐに市場に買い物に行った。
不足していたシャンプーやボディーソープ等の日用品、それとハチミツのお菓子に使いそうな小麦粉やバターもたくさん買い込んだ。
帰ったら既に兄の姿はなく、「仕事行ってくるね♪」の書き置きがテーブルに残っていた。
――いいなぁ……俺も兄上と狩りに行きたい。
何故か知らないが、死合いにしろ狩りにしろ、今まで一度も兄とバッティングしたことがない。
もちろんプライベートでは手合わせしたり、狩りに行ったりすることはあるのだが、公式のスケジュールに組み込まれたことは一回もなかった。
――上位ランカーとして後輩を引率している兄上も、見てみたいんだけどな……。
ここまでバッティングしないと、最早ヴァルキリーたちの嫌がらせなんじゃないかと思えてくる。「トーナメントに集中しろ」とかいう意味不明な気を遣うくらいなら、兄と仕事をさせてくれ。
一人でむくれつつ、アクセルは早速ハチミツのキャンディーを作ることにした。
ハチミツとミルクを適当に鍋に放り込み、そのまま焦げないようにかき混ぜながらひたすら煮詰める。
明日には次の対戦相手がどちらになるか判明するから、それの対策をしないとな……。
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