1482 / 2204

第1482話

「って、うわっ……! 焦げる焦げる!」  あれこれ考えていたら上の空になっていたらしく、鍋が焦げそうになっていた。  急いで火加減を弱め、鍋の底を擦るようにハチミツとミルクを混ぜる。かなりとろみがついており、これ以上加熱したら固くなってしまいそうだ。  ――本当にこれで合ってるのか……? 作り方間違ってるような気が……。  半分疑いつつ、とりあえず一度鍋から下ろしてみる。  このまま放置しておくのも何なので、煮詰めたハチミツを平らなトレーに流し入れ、一度冷やしておくことにした。  そうしている間に、余ったハチミツで違うお菓子を作ってみる。砂糖の代わりにハチミツを使ったスポンジケーキだ。こちらはいつもの作り方でいいので比較的簡単だった。材料を全部混ぜて適温で焼くだけだ。 「……よし、こんなもんか」  オーブンにスポンジを入れ、問題のキャンディーの様子を見る。  粗熱は取れていたので、キャンディーらしく一口サイズに丸めようとした。  ……が、予想以上にベタベタしていて、ちょっとスプーンで触れただけでもねっとりくっついてしまう。今から形を整えるのは難しそうだ。  ――これは失敗かな……。兄上が帰ってきたら、一緒にパンに塗って食べよう……。  かなり濃厚なハチミツトーストになりそうだけど……と思いつつ、オーブンで焼いているスポンジケーキの様子を見た。そちらは失敗してなさそうだったのでホッとした。  焼き上がるのを待っている間に散らかったものを片付け、ついでに夕食用に鹿肉のシチューの下準備だけしておいた。  今日も兄が何か戦利品を持って帰ってくるだろうから、昨日の分は腐らないうちに消費しておきたい。 「うん、こっちはいい感じだ」  焼き立てのスポンジケーキから、ハチミツの甘い香りが立ち上って来る。膨らみ方もふわふわで、なかなか美味しそうだ。  ケーキを切り分け、自分の分を皿に乗せてベランダに持って行く。そして昼食がてら、ピピと一緒にスポンジケーキを味わった。

ともだちにシェアしよう!