1483 / 2205

第1483話

 我ながら、かなり美味しく作れて満足した。ピピもとても美味しく食べられたようで「もっとおかわりをくれ」と熱心に催促された。食べすぎは厳禁だから、何とか宥めて止めたけど。  使った皿を綺麗に洗い、午後はそのまま庭で鍛錬を行った。  夕方になって仕込んでおいた鹿肉のシチューをしっかり煮込み、肉がホロホロになるまで火を通す。  しばらく煮込み続け、味見をして野菜も煮えていることを確認してから火を止めた。  これで兄が帰ってきたらすぐに夕食にできる。  そう思って待っていたのだが、夜の六時を回っても七時になっても兄は帰って来なかった。  いつもは狩りの引率でも五時くらいには帰ってくるのに、何故今日に限ってこんなに遅いのだろう。何かあったんだろうか。  心配になって、アクセルは急いで戸締りをして家を出た。念のため、ピピには家で留守番してもらうことにした。行き違いになったら大変だ。  ――兄上……本当にどうしたんだろう。  そんなに大変な狩りだったんだろうか。だけど、万が一とんでもない神獣が出てきたとしても、兄だったら撤退するなり逃げるなり、的確な判断ができると思う。深追いして怪我をするなんてミスは冒さない。  それなら何故、いつまで経っても帰って来ないのだ……?  まずアクセルは世界樹(ユグドラシル)の前まで行き、兄がどこへ狩りに行く予定だったのかを確認した。  月間スケジュールを貼り出されているところには、今日の日付で「フレイン隊:スレイプニルの山へ調査」と書かれていた。  ――え、スレイプニルの山……? そんなところに行ったのか……?  スレイプニルとは、オーディンの愛馬であり八本の脚を持つ神獣である。神獣の中でもトップクラスに強いとも言われていて、縄張り意識も強いそうだ。  そんな彼らの縄張りに踏み込んだら、例え上位ランカーでも無傷で済む保証はない。ヴァルハラに来たばかりの新人を引率していては、行動が制限されてしまうこともあるだろう。

ともだちにシェアしよう!