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第1487話
でも、兄の手に負えないような場所に自分が飛び込んで行ったところで、力になれるとは限らない。下手したら足手まといになってしまうかもしれない。
それなら自分は素直に引き返して、もっと力のある人たち――それこそ、ミューやジーク、ユーベルなどに応援を頼んだ方が無難なのかも……。
頭の中で様々な考えが蠢き、さんざん悩みまくった結果どうしていいかわからなくなり、結局アクセルは直感で答えを出した。
「ピピ、急いで戻ってジーク様やミューを呼んで来てくれ。俺はこの先に進む」
「ぴ!?」
「俺自身も、あまり深入りしないようにはする。すぐに味方を呼んで来てくれれば何とかなるはずだ。だからピピはこのまま山を下りて……」
「ぴぃぃぃ……!」
そう言いかけたら、何故かピピが深く唸り始めた。
どうしたのかと思っていたら、急にピピは強く服を噛み、そのままポーンとふかふかの背中に放り投げてきた。
「うわっ……!」
ぼすん、とピピの背中に落下し、すぐさま起き上がろうとしたけれど、ピピはダッシュで山を下ってしまう。
「ちょ、待ってくれピピ! まだ帰るわけには……!」
「ぴー!」
あんたの意見なんて知らんと言わんばかりに、完全に無視で家に帰り着いてしまう。家の明かりはついておらず、未だに兄は帰っていないようだった。
「ピピ、なんで勝手に帰っちゃうんだよ。俺はあの先を調査しなきゃいけなかったのに」
背中から下りながら文句を言ったら、今度は強靭な前足でキックされた。
「どわ!」
軽く吹っ飛ばされて地面に倒れたところを、上からのしかかられる。
「ちょ、ピピ……やめてくれ」
「アクセル、おばか」
「……え?」
「よるのやま、きけん。あのさき、きけん。かえってこれない」
「……!」
「ピピ、アクセルすき。だから、とめる。アクセル、れいせいじゃない。とめないと、またぼうそうする」
「…………」
言われて、アクセルは長い息を吐いた。
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