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第1495話

「私は止めたんだけど、大勢の新人を一人で止めることはできなくてね。一部は奥まで入って行っちゃって……その後はお察し。生きて帰れたのは一人か二人だったよ」 「……そうか」 「いくら復活できると言っても、遺体がなければ蘇生は不可能だし。スレイプニルの猛攻をかいくぐって遺体を回収するのはなかなか骨が折れる仕事だった。まあ、一部回収できなかった人もいるけど……」  そうだろうな、と思った。  これだけ遺体がぐちゃぐちゃなのだから、現場の凄惨さは想像するに余りある。原型を留めていないものもたくさんあるし、取りこぼしてしまった人もいるだろう。  新人たちも、いきなり危険区域に放り込まれて肉塊になってしまうなんて気の毒な話である。 「お前は、ついて来なくて本当によかったよ。あんなところに行ったら、普通の戦士は無傷で帰って来られないもの。お前がこんな風に肉塊になっちゃったら、私は悔やんでも悔やみきれない」 「う、うん……そうだな……」 「どうしたの? 手が止まってるけど」 「あっ、いや、な……何でもないです……」 「……。……まさかと思うけどお前、私を追いかけてあの山に行ったなんて言わないよね? さすがにそこまでおバカじゃないよね?」 「ま、まさか……。追いかけてはいないです、はい……」  追いかけたのではなく、心配で捜索に行っただけだ。もちろん途中で帰ってきたし、深入りもしていない。危険な目に遭う前に引き返した。……まあ、それもピピのおかげだが。  内心冷や汗をかいていたら兄はそんな弟の心情を読み取ったようで、深々と溜息をついてきた。 「……そうか。またお前は考えナシに無謀なことを……」 「い、いや、それは……。夜になっても兄上が全然帰ってこないから、何かあったのかと思って心配で……」 「言い訳する前に、まず言うことがあるだろう」 「す、すみません……」  しゅん……と肩を落としてうなだれていると、兄は淡々と続けた。

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