1496 / 2206
第1496話
「……まあ、連絡できなかった私も悪かったけどね。お前が心配するのはわかってたけど、あの状況じゃどうしても連絡できなかった。そこは反省してる」
「い、いや、そんな……。勝手に飛び出して行ったのは俺が悪いんだし……」
「というかお前、どこも怪我してない? 危ない目に遭う前に帰って来られた?」
「ああ……。何とかピピが止めてくれたから」
「それはよかった。本当にピピちゃんは慎重で賢いね。後でよーくお礼を言っておくんだよ?」
「……はい」
それっきり兄は何も言わなかった。
淡々と仕分け作業を続け、分け終わった遺体を手早く棺に放り込んでいた。
「……兄上、怒ってないか?」
「怒ってはいないかな。少なくともお前には。ヴァルキリーたちの理不尽さにはうんざりしてるけどね」
「それは……」
「私はともかく、巻き込まれた新人が可哀想だよ。ヴァルハラに来たばかりで右も左もわからない時に、いきなり肉塊にされちゃってさ。挙句の果てに復活できないかもしれないなんて、何のためにヴァルハラに来たかわからないじゃないか……」
「…………」
アクセルは視線を落とした。
目の前にはヘビのような小腸が転がっており、パッと見ただけでは誰のものか判別できない。
――新人も、自分がこんな風になるなんて思っていなかっただろうな……。
もしこれが俺だったら……と考えるとぞっとする。さすがの兄も、内臓だけになってしまった弟を判別することはできまい。
ぐすん、と鼻をすすりながら、アクセルは黙って仕分けを続けた。
棺には、同じ人物のパーツしか入れてはいけない決まりになっている。万が一違う人の腕などが混じると、腕だけ別人のキメラ人間が出来上がってしまう可能性があるからだ。
なので、誰のものか判別できないパーツは廃棄するしかないのである。そこもまた悲しかった。
「さて……こんなもんかな」
一通り仕分けが終わった兄が腰を上げる。
アクセルも一区切りつけて立ち上がった。
ともだちにシェアしよう!