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第1501話
「兄は、『ヴァルキリーは今の上位ランカーを交代させたいんだ』って言っていましたが」
「そうでしょうね。我々が上にいると、すぐに反論が飛んできますから。何でも自分たちの思い通りになる、仕事に対して文句を言わないイエスマンのような上位ランカーの方がいいのでしょう」
その方が都合もいいですし……と、首を振るユーベル。
「最近始まったトーナメントも、我々にとっては嫌がらせでしかありません。下位ランカーが楽しむのはいいですが、余計なイベントを作ったものだと個人的には思っています」
「え、トーナメントもですか? 確かに、上位ランカーに仕事のシワ寄せが行っているとは聞きましたけど……」
「それだけならまだよかったんですがね。トーナメントの優勝賞品が『上位ランカーへの挑戦権』というのが何とも。トーナメントを勝ち上がって来るほどの猛者なら我々と対等に戦えるでしょうし、それによって代替えが起こる可能性は十分考えられます」
「……あ」
言われてみればその通りだ。
自分は「兄と戦いたい」一心で優勝を目指していたけれど、上位ランカーにとっては「トーナメント優勝者」というのは自分の立場を危うくする存在でしかないのか。
兄は「頑張って優勝してね」としか言わないけれど、自分のランクが落ちる(かもしれない)ことへの懸念はないんだろうか。トーナメントについて、本当はどう思っているんだろう……。
考え込んでいたら、ユーベルが自分の洗濯物を抱え直した。そして言った。
「まあ、ヴァルキリーたちが何をして来ようが我々はただ自分の使命を全うするだけですけどね。我々を凌ぐ強者が現れるなら、それはそれで僥倖 。トーナメントに関しては、しばらく高みの見物をさせていただきます」
「は、はあ」
「あなたも、優勝を目指しているならもっと実力をつけることですね。それでは失礼」
立ち去っていくユーベルを見送り、アクセルは回り続けている魔法のドラムを見つめた。
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